「熊野寮自治会関係者による暴力的な行為について」に対する反論声明

 

2022年2月3日

熊野寮自治会

 

 12月15日、京都大学当局は「熊野寮自治会関係者による暴力的な行為について」と題する声明(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-12-15-2)を公開した。この声明は、熊野寮自治会および熊野寮祭企画「時計台占拠」参加者を中傷するものであり、断じて許容できない。

 京都大学当局は近年政府主導の大学改革の基、学生自治やサークル活動に対する規制、授業改革、ガバナンス強化による総長の権限強化を進め、同時並行で懲戒処分や学生を監視する目的での監視カメラ増設・警備員雇うなど、学生に対する弾圧を強めてきた。これら全てが総長をはじめとするごく少数の役員会の決定に基づいて行われており、役員会に逆らう学生は皆処分する(注1)という事実上の独裁体制が敷かれている。学生との団体交渉や話し合いもまたことごとく拒否されており、京都大学に関するあらゆる決定事項が一方的に学生や教職員に押し付けられている。かつては京大当局の黙認の下に開催されていた「時計台占拠」もまた、近年になって一方的に禁圧されはじめたものである。

 熊野寮自治会は役員会による不当な学生処分・大学改革・団体交渉拒否に再三にわたって抗議してきたのであり、時計台占拠はこうした現状を打破する学生の実力を示すために行ったのである。すなわち、実際に抗議をし不当な圧力を跳ね返すことができること、並びに、今現在全国各地で大学執行部から不当な扱いを受けている学生・教職員らを支援するための行動を実行に移せる力を内外に示すための行動であった。

 

 以下、この声明の個々の内容に反論する。

 

・「令和3年12月3日に熊野寮自治会関係者(以下「関係者」という。)がサングラス、ヘルメット、フェイスマスクなどによって顔を完全に隠し着衣も一様に揃え身元が特定されないよう準備した上で、」との記述に対して

 昨年の「時計台占拠」では複数の学生が恣意的に選定されて懲戒処分を受けており、学生らが「身元が特定されないよう準備した」のは不当な処分を防ぐためである。非難されるべきは処分や刑事告発のために「身元の特定」を図る大学当局であり、「身元の特定」を防ぐ学生らではない。そもそも、顔を完全に隠すこと自体は禁止されるようなことではないはずであるが、この箇所はいかなる意図で書かれているのであろうか。

 

・「職員の制止を振り切り構内に梯子を持って突進してきた。この梯子を持って構内に突進する行為は、関係者が構内で配布したビラ及び当日の同関係者の言動によると、百周年時計台記念館(以下、時計台記念館)という。)に登ることを目的としたものであったと思われる。この時計台記念館へ梯子をかけて登る行為については、例年、熊野寮自治会が熊野寮祭の一環として企画していたため、本学は事前に熊野寮自治会に対して実施しないよう通告し、また、全学に対して告示を発出し、このような企画に参加しないよう学生諸君に求めたところである。」との記述に対して

 「時計台占拠」は、まさに一方的な「告示」や「職員の制止」によって学生の自主的な活動が阻害される現実を変えるための企画であった(注2)。熊野寮自治会は、「時計台占拠」の開催に先立ち、京都大学教育推進・学生支援部の窓口に赴いてこれらの「告示」および「職員の制止」に抗議した。しかし、熊野寮自治会の言い分は聞き入れられず、職員による妨害や警察への通報が強行された挙句、今回の声明が発表されるに至ったことは誠に遺憾である。

 

・「それにもかかわらず、関係者がこれらの通告等を無視して構内に梯子を持って突進したこと、突進を制止しようとした職員の中から、昨年に引き続き、負傷者が出たことは誠に遺憾である。」との記述に対して

 昨年および今年を含む、これまでの「時計台占拠」で最も危険な状況を生んだのは職員による無謀な妨害行為であった。仮にそれによって職員が負傷したのであれば、その業務を命じた者の落ち度でこそあれ「時計台占拠」の落ち度ではない。

 なお、道上厚生課長は現場で、学生との接触を過剰に騒ぎ立てて暴行を捏造する行為に及んだ。これまでに京大職員は、わざと転ぶなどして学生の「公務執行妨害」を捏造する行為(通称「転び公妨」)を繰り返しており、このような事実に反する悪宣伝は京大当局の常套手段である。京大当局による「職員の中から負傷者が出た」という発表も、詳しい状況や証拠が提示されておらず、ずさんな悪宣伝であると言わざるをえない。

 

・「時計台記念館へ梯子をかけて登る行為は、本学が明確に禁じるものであって許されない行為である。」との記述に対して

 「時計台占拠」を「危険」「暴力的」などと決めつける諸々の記述とは別に、「本学が明確に禁じる」こと自体に意味を持たせて時計台占拠を「許されない」と断じるこの一文は、役員会が京大を独裁する姿勢を端的に表している。熊野寮自治会は、京大当局が「時計台占拠」を一方的に「禁じ」ていること自体に抗議する立場である。

 

・「また、梯子を持って突進する行為は、周囲の人間に傷害を負わせる危険のある許されない行為である。」との記述に対して

 梯子の運搬を「突進」と称して危険性を言い募ることは印象操作の域を出ない。むしろ、梯子を持って移動している集団の進行を職員が暴力的に妨げたことがはるかに危険である。

 

・「同日は時計台記念館へ登ることを阻止され、登れなかったとはいえ、学問の府である大学内においてこのような暴力的な行為に及ぶことは極めて悪質であり、本学として看過することはできない。」との記述に対して

 自由を勝ち取る闘いは、必然的に支配者から敵視され「暴力」「悪質」などのレッテルを貼られるものである。このような印象操作に熊野寮自治会は屈しない。むしろ、「時計台占拠」を不当に阻止する目的で、学問の府である大学に警察という暴力を導入した(注3)ことこそ極めて悪質であり、学生自治会として看過することはできない。

 

・「本学は、このような企画を主催した熊野寮自治会並びに企画に参加し梯子を持って構内に突進した暴力的な行為に関与した者に対し、法的措置を含め厳正に対処する方針である。」との記述に対して

 大学当局が施設管理権を盾に大学を私物化して、役員会の意に沿わない活動を暴力的に取り締まり恫喝することを熊野寮自治会は決して許さない。熊野寮自治会は、このような暴力的な行為に関与した京大当局および京都府警に対し、抗議行動を含め厳正に対処する方針である。

 

・「また、熊野寮自治会に対しては、事前に上述のような行為を行った場合は、同自治会には自治会としての責務を果たす意思及び能力が欠落していると判断せざるを得ないと通告した。今回の行為は、同自治会に自治会としての責務を果たす意思と能力がないことを示すものと言わざるを得ない。」との記述に対して

 言いがかりをつけて熊野寮自治会の非公認化を示唆する記述であり、大学のガバナンス強化と学生の個別管理のために学生自治会を敵視する当局の立場性が表れている。

 

 よって、熊野寮自治会は、京都大学当局に対し、本声明の即時撤回を求める。

 

(注1)不当処分についての情報は、「京大生有志による処分関連情報サイト」(https://kyoto-u-syobun.jimdofree.com/)にまとまっている。

 

(注2)「時計台占拠」の意義については、「時計台占拠声明文」(https://kumano-ryo.jimdofree.com/声明文/時計台占拠声明文/)に詳述されている。以下に、同声明の序文を引用する。

 

 京大で、自由が奪われています。授業で、サークルで、研究室で、キャンパスのあらゆる場所で。表現の自由は一方的に規制され、生活は脅かされ、対話は拒否され、抗議した学生が次々と懲戒処分を受けています。ひと握りの役員会が独裁を敷き、教職員の権利も奪われています。

 全国の大学で、あるいは職場や政治においても同じような悲劇が繰り返されているのではないでしょうか。自由や権利が奪われるのに憤りながらも、変わらない現実に辟易してはいませんか。

 大学に、そして社会に自由を取り戻す。私たちには現実を変える力があることを証明する。そのために、私たちは今日時計台占拠に挑戦します。

 時計台占拠は、京大の象徴である時計台を占拠するイベントです。役員会が支配するキャンパスを私たちの手に取り戻し、誰もが堂々と主張し活動できるようにするたたかいの最前線です。

 ぜひ、私たちの思いに耳を傾けてください。そして一緒に時計台に登りましょう。

 

(注3)警察導入の不当性については、「京大当局による大学構内への警察大量導入に対する抗議声明」(https://kumano-ryo.jimdofree.com/声明文/京大当局による大学構内への警察大量導入に対する抗議声明/)に詳述されている。