全国学寮交流会にて採択された文部科学省への提案

 

 去る3月16日、金沢大学泉学寮で行われた全国学寮交流会にて、学生寮が置かれている状況を文部科学省に適切に把握させるための提案を採択しました。

熊野寮自治会もこの提案に賛同します。

 

以下本文

 

文部科学省への提案

 

 全国学寮交流会は全国の学生自治寮間の交流と相互扶助を目的として1981年から活動を 続けてきました。 

 

 学生自治寮は月々数千円から2万円ほどの極めて安い費用で住むことができ、教育の機会均等を保障する厚生施設です。物価高や教育費が高騰するなかで、このような施設を必要とする学生はますます増えていますが、新造される学生寮はどれも寄宿料が高く、寄宿料の安い学生自治寮については学生に十分な説明がなされないまま廃寮化がおしすすめられてきています。 

 

 日本は 1979 年以来「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」を批准していますが、第 13 条 2(b)「高等教育の無償化」については、社会権規約に拘束されない権利を長らく留保してきました。2012 年 9 月、日本政府は同留保を撤回し、高等教育無償化をめざす世界的潮流を受け容れる姿勢を示しました。また、国内法である教育基本法第 3 条においても、経済的理由によって教育を受けられない者が出ないようにしなければならない旨が示されています。そうであるならば、安価な学生寮はいっそう増強されるべき施設であるはずです。 

 

 しかしながら、日本の学寮政策において「福利厚生」という観点はますます小さくなる一方です。文科省のホームページには厚生施設について次のように書かれています。「厚生施設については、学生に対する経済的な援助や学生の人間形成の助長を図る観点から、整備充実が行われてきた。国立大学の学生寄宿舎については、昭和四十九年以降、居室の改善を図るため、旧寮の建て替えとともに新規格寮の整備を進めており、平成三年度からは、留学生の増加に伴う措置として日本人学生との混住寮方式の学生寄宿舎の整備を行っている。なお、三年度には、課外活動関係施設、社交施設、福利施設などを備える大学会館は八三大学に、学生の心身の健康の保持増進を図るための保健管理センターは八六大学に設置されており、また、全国七地区には、国立大学が利用できる合宿研修施設が十三設置されている。」

 

 留学生と日本人混住の学生寄宿舎によって留学生が居住することができるスペースが増加すること自体は望ましいものですが、近年建造されている混住型寄宿舎は民間業者が管理運営を担っていて寄宿料が高かったり、在寮年限が短いなど学生の福利厚生施設としての機能を十分に果たすことができていません。なぜならば、こうした寄宿舎は実際に生活する学生の声を踏まえてではなく、大学や政府のトップダウンの追従に従って建てられてきたものだからであり、そこでの学生自治の必要性が軽視された設計になっているからです。

 

 学生寮のもっとも重要な側面は教育の機会均等を保障する「福利厚生施設」としてのものであるべきです。学生寮はそこにしか住むことのできない、嫌だからといって出ていくことのできない困窮学生が多くいます。学生自治寮であれば、そこに住む住人どうしで話し合い、より柔軟に運営することができます。このようなシステムは福利厚生施設にとって必要不可欠なものです。学生寮が福利厚生施設であることは学生による自治と密接に結びついています。

 

 

 

 私たちは学生自治寮の存在とその果たす役割に強い意義を感じる当事者として、文部科学省に対して次のことを提案します。

 

1 本来の学生寮のあり方から乖離している施策を見直し、教育の機会均等の実現のために

学生が住める安価な学生自治寮を整備する。

 

2 既存の自治寮を廃寮化するのではなく、寮生による自治を認め、学生による自治のしく

みを維持できるような改修・建て替えを実施する。

 

3 学生自治にはそこに住む寮生同士の日常的な対話と相互理解が不可欠である。寮生の

密な交流を可能にする共用スペースなどを充実させる。

 

4 課程・国籍・性別によらず、大学で学ぶすべての学生に学生寮に居住できる権利を保障

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